3.海洋物理学の準備1 −コリオリ力と惑星ベータ効果−

 自転する地球上に立つ私たち(下図左)は、二種類の回転を経験している。

●下図右下に示す「回転1」は、それぞれの緯度で地軸(朱線)に直交する円盤上の、地軸を中心とした回転
●下図右上に示す「回転2」は、自分の頭上から下に向けて突き立てた軸を中心とした回転


●赤道(C)では回転1のみを経験しており、回転2はしていない
●極(A)では回転2を経験しているが、円盤の径が0になる極では回転1は存在しない。

●回転1のために働く見かけの力は遠心力(講義で説明)
●回転2のために働く見かけの力はコリオリ力(講義で説明、でも下にエッセンスを)


 自転する地球上(北半球)に立つ人が経験する回転2とは、上から見て反時計回りに回転する円盤上に立つ人が経験するものと同じである。上図の1,2,3の順に回転している円盤上(上から見ている)の中心に立つ人(○)を考えよう。人の視線方向を○につけた短い棒の向きで示している

 1で視線方向にボール(●)を投げる。ボールは、2,3でも、方向を変えずに、まっすぐに進んでいく。

 ところが、中心に立つ人の視線は、2,3と進行する円盤の回転に応じて図の短い棒の向きに変化する。この人にとってボールは、右図に示すように、点線で 示した視線方向から、次第に右へとずれていくように見えるだろう。このボールを右へずらす力は、単に視線の変化による見かけのものではあるが、地球のよう に途方もなく大きな回転する地表(回転系)に立つ人には、何らかの力が実際に働いているように思えてしまう。この見かけの力をコリオリ力と呼ぶ。

 北(南)半球では、運動に対して直角右(左)向きにコリオリ力が働く。

【参考】コリオリ力の導出 絶対座標系から回転座標系への変換で生じる「見かけの加速度」(pdfファイル)


惑星ベータ効果
 北半球の緯度φの地点Aに立つ人が、真北のOを見ているとしよう。地球自転に伴う「自分の頭上から真下に向けた軸周りの回転(回転2)」にしたがって、この人の視線方向は変化する。ただし、極にいる場合と異なって、この人は一日に360度の回転をしなくても、元の視線に戻ることができる。


 これは、緯度φの地点を底面として、視線方向を稜線とする、円錐を展開(右図)すれば理解できる。球上のA点にいる人は、一日たてば元のA点に戻る(左 図)。展開図(右)では、これをAとA'として区別しよう。常にOを見続けているこの人は、一日に角度θの回転2しかしなくても、球上では元の視線に戻ることができる。=このときの回転2の角速度は、θ/日である。

θの導出は講義で。高校で習った三角関数の知識で十分。
θが緯度によって異なることが、惑星ベータ効果(緯度によるコリオリ力の変化)の原因となる。すなわち、赤道でのコリオリ力は0で極で最大となる。