今、東向きをx、北向きをy、深層最上部をz=0として上向きにzの正をとる。水深はz=−Hとおく。ここで地衡流平衡の式(講義の(1)(2))と連続式(同(3))を用いると、
(中略)
を得る。(4)によると、深層最上部で上向きの流速W0をあたえることで、左図Aのように、南北半球でのコリオリパラメータの正負に応じて極向きの流速が駆動される。
深層海洋の大部分で極向きの流れになる要請から、極からやってくる冷水は、図B(北半球を拡大)の@かAのように壁伝いにやってくると考えよう。@は南下の後、反時計回りの循環を形成し、Aは時計回りの循環を形成する。
南下流に作用するβ効果は、表層循環で述べたように反時計回りの回転を強制する。このとき、同じ回転方向を持つ@だけが存在することを許され、Aは消えてしまうだろう。結果として、深層循環は表層と同様に西岸近くに境界流を持つことになる。
深層循環の西岸境界流は、深層最上部からでていく鉛直上向きの流量とのバランスをとるために、赤道を越えることもありえる。
深層に及ぶほど大規模で定常的な冷水の沈み込みは、いずれも大西洋の、グリーンランド沖と南極ウエッデル海の2ヶ所で確認されている。