<< ロケット打ち上げに関わるCALIPSOを用いた氷結層 >>
● 人工衛星のデータはタダで手に入るのですか?
● 今回は1年間のデータ解析を行っていましたが、別年度でもこの研究結果は起こりそうですか?
● 自分で定義した氷結層と打ち上げのときにJAXAが考える氷結層というのは同義ですか?
● 同じ厚さ・量の氷結層でも、高度の違いでロケットへの影響度が違うことはありますか?
● 冬場の氷結層が多いので、ロケットの冬場の打ち上げ自体の数を減らすといったことは行われているんですか?
● 何でエアロゾルを観測することで氷結層とわかるのですか?航空機(目視)で電界はどのようにしてわかるのですか?
● CALIPSOの高度は705mですが、一般的な人工衛星の高度はどのくらいですか?(705mは低くないかな…と思いました)
● NOAAや気象庁の予測モデルはどのくらい正確なのですか?
● 氷結層のことを考えると、種子島でのロケットの打ち上げは好都合なのでしょうか?また、氷結層のことを考えると、日本だとどこで打ち上げるのが好ましいですか?
● 夏や秋の打ち上げの方が望ましいとのことだったが、なぜ実際の打ち上げは1年中を通して行っているのか。(夏・秋に集中させたりしないのか)
● 氷結層の影響を避けるしかないですか?その影響を排除する可能性はありますか?
● 氷雲存在比は、なぜ北半球での冬のピークと南半球の夏のピークとずれたのか?
● 研究のまとめとして述べられた打ち上げに適した季節や氷結層に関しての見解はこれまでになかったのか。(知識としてなかったのか?)
● 雷や電界のメカニズムの理解が、この研究にどう生かされますか?
[Q] |
人工衛星のデータはタダで手に入るのですか?
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[A] |
ウェブ上に無料で一般公開されているものもありますし、所有団体に申請が必要なものもあります。
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[Q] |
今回は1年間のデータ解析を行っていましたが、別年度でもこの研究結果は起こりそうですか?
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[A] |
季節変化によるものは、同じような結果が得られると思います。ただ、長期で解析することで、1年間だけでは見ることのできなかった相関や、気候変動による局所的な変化を見ることができると考えています。
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[Q] |
自分で定義した氷結層と打ち上げのときにJAXAが考える氷結層というのは同義ですか?
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[A] |
「同義になるよう、雲粒レベルの観点から解釈した」という方が正しいかもしれません。他の要因もすべて考慮できているわけではないので、この段階で同義だと断言することはできませんが、結果として近い解釈ができていたと考えられます。
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[Q] |
同じ厚さ・量の氷結層でも、高度の違いでロケットへの影響度が違うことはありますか?
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[A] |
現在のところ、氷結層高度による影響の違いは考えられていません。
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[Q] |
冬場の氷結層が多いので、ロケットの冬場の打ち上げ自体の数を減らすといったことは行われているんですか?
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[A] |
現在は行われていません。ロケットを打ち上げる日は、惑星探査の場合には最短距離になるよう年単位・月単位で日時を決めています。そのため、打ち上げ現場の状況を考え冬場の打ち上げをしないといったことは行われていません。
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[Q] |
何でエアロゾルを観測することで氷結層とわかるのですか?航空機(目視)で電界はどのようにしてわかるのですか?
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[A] |
エアロゾルを観測して氷結層を見ているのではなく、エアロゾル(大気の塵)といった粒子レベルの観測ができる人工衛星のデータを使っています。そのデータの中でも、雲判定データ(雲なし、水雲、過冷却雲、氷雲)を用い、過冷却雲と氷雲が重なる部分を氷結層と定義し解析しています。航空機の目視というのは、雲の厚さを目視しているという意味で、電界は上空で測器を使っています。
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[Q] |
CALIPSOの高度は705mですが、一般的な人工衛星の高度はどのくらいですか?(705mは低くないかな…と思いました)
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[A] |
すみません。705kmの表記ミスでした。気象衛星には基本的に静止軌道と極軌道を使用しています。ひまわりは静止軌道で、赤道上空35,880km前後を自転と同じ方向に周回しているため静止しているように見えます。また、CALIPSOのような極軌道周回衛星は、地上850km前後を周回しています。ちなみに、国際宇宙ステーションは高度約400kmです。
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[Q] |
NOAAや気象庁の予測モデルはどのくらい正確なのですか?
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[A] |
NOAAはラジオゾンデの実測値と比べると、気温のRMS誤差は1~2K、露点温度のRMS誤差は2~8K程度です。気象庁は、どの予測データを使用しているか不明のため、精度については回答できません。
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[Q] |
氷結層のことを考えると、種子島でのロケットの打ち上げは好都合なのでしょうか?また、氷結層のことを考えると、日本だとどこで打ち上げるのが好ましいですか?
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[A] |
今回、鹿児島県沖のみでの測定をしているため、その他の場所の特定はできませんが、氷結層を考えると氷の雲が広がりにくい暖かい気候が適していると言えます。打ち上げ場所は、地球の自転速度をロケット加速に利用できるよう赤道に近い場所へと、種子島に移転しました。昔は秋田県で打ち上げられていましたが、日本海での隣国とのトラブルがあり太平洋側へ、さらに赤道に近い場所として種子島が選ばれました。(当時、沖縄はアメリカ占領下)これらの背景から、総合的に判断して種子島が今の段階ではベストであると考えられます。
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[Q] |
夏や秋の打ち上げの方が望ましいとのことだったが、なぜ実際の打ち上げは1年中を通して行っているのか。(夏・秋に集中させたりしないのか)
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[A] |
ロケットを打ち上げる日時は、惑星探査の場合には最短距離になるよう年単位・月単位で日時を決めています。そのため、打ち上げ現場の状況を考え冬場の打ち上げをしないといった判断はまだ厳しいと言えます。
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[Q] |
氷結層の影響を避けるしかないですか?その影響を排除する可能性はありますか?
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[A] |
現在は、存在する氷結層の影響をいかに受けないように避けて打ち上げるかということがメインとなっています。今後、さらに研究が進み対策等立てることができれば、この問題をクリアできるのかもしれません。よりよい土地があれば移転ということも考えられますが、射場の移転には何より周辺住民の理解が得られることが第一なので、今の場所からの移転には厳しいハードルがあります。
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[Q] |
氷雲存在比は、なぜ北半球での冬のピークと南半球の夏のピークとずれたのか?
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[A] |
この四季は、すべて北半球における四季を表しています。北半球が冬の場合、北半球で地表面が冷やされ、低い高度でも氷雲が多く存在できるようになります。一方、北半球が夏の場合、地表面が暖かいので、空気塊・雲が持ち上げられ、高い高度でのみ氷雲が存在できるようになります。この違いにより、ピークのずれが生じています。
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[Q] |
研究のまとめとして述べられた打ち上げに適した季節や氷結層に関しての見解はこれまでになかったのか。(知識としてなかったのか?)
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[A] |
季節に関しての見解は、これまで打ち上げられたロケットの記録(日時・氷結層による打ち上げ延期有無)のみで比べられており、人工衛星を用いての解析はこれまでありませんでした。
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[Q] |
雷や電界のメカニズムの理解が、この研究にどう生かされますか?
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[A] |
氷結層が危険な理由は、あくまで「雷」を起こす雲だからです。雷が落ちなければ安全な雲だと判断され、打ち上げが可能となります。今回行った研究に加え、雷が起きるメカニズムや電界がどういう状況だと雷が落ちやすいのかといった考慮を加えることで、定義した氷結層をまた新しく、より精度のあるものに定義できると考えました。
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